夜中に足がつる「こむら返り」。水分だけでは足りない理由と予防の工夫・鍼灸でできること
夜中、ふくらはぎがビキッとつって飛び起きる。痛みがおさまるまで、じっと耐えるしかない——いわゆる「こむら返り」です。「水分はちゃんととっているのに、なんで?」という声を、この時期よく耳にします。実は、夏のこむら返りは水分だけでは防ぎきれないことが多いのです。なぜ夏の夜に足がつりやすいのか、今日からできる予防の工夫、そして、つってしまったときの対処までお伝えします。
こむら返りは、筋肉の「誤作動」
こむら返りは、ふくらはぎの筋肉が自分の意思と関係なく、ぎゅーっと縮んだまま戻らなくなる状態です。
筋肉には「縮む指令」と「ゆるむ指令」があり、ふだんはこの2つがバランスよく働いています。ところが、何かのきっかけでこのバランスが乱れると、「縮め」の指令だけが暴走して、筋肉がつってしまいます。そして夏の夜は、この誤作動が起きやすい条件がいくつも重なっています。
なぜ夏の夜に増えるのか——3つの重なり
① 汗と一緒にミネラルが流れ出ている
汗で失われるのは、水分だけではありません。筋肉の「ゆるむ働き」に深く関わるマグネシウムをはじめ、ナトリウムやカリウムといったミネラルも一緒に流れ出ていきます。
水だけをたくさん飲むと、体の中のミネラルの濃度がさらに薄まってしまうこともあります。「水分はとっているのにつる」の背景には、これがあると考えられます。
② 冷房でふくらはぎが冷えている
寝ている間、冷房の風は下にたまります。布団から出たふくらはぎや足先は、一晩じゅう冷やされ続けて、血流が落ちていきます。冷えて血流が落ちた筋肉は、ミネラルや酸素の補給が滞って、誤作動を起こしやすくなります。
③ 日中に足を使っていない
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、動くことで血液を心臓へ送り返すポンプの役割をしています。日中座りっぱなしでポンプが働かないと、夕方には足がむくみ、血流が滞ったまま夜を迎えることになります。
汗でミネラルが減り、冷房で冷え、日中は動いていない。この3つがそろう夏の夜は、こむら返りにとって好条件なのです。
東洋医学の視点——筋は「肝」と「血」が養うと考えます
東洋医学では、筋肉ののびちぢみは「肝(かん)」の働きと関わりが深く、筋は「血(けつ)」によって養われていると考えます。ここでいう肝は、西洋医学の肝臓そのものではなく、血を蓄えて体の働きをのびやかに保つ役割を指す言葉です。
夏は汗をかくことで、血や潤いが消耗しやすい季節。そこへ冷えが加わって巡りが滞ると、筋肉が十分に養われず、ひきつれやすくなると考えられてきました。ただし体質によって背景はさまざまで、どなたにも同じ説明が当てはまるわけではありません。
鍼灸の現場では、ふくらはぎの真ん中あたりにある「承山(しょうざん)」というツボをよく使います。アキレス腱からふくらはぎに向かって指でなで上げていき、筋肉のふくらみの下のくぼみで指が止まるところです。お風呂上がりに、ここを気持ちいい強さでゆっくり押してあげるのもおすすめです。
食事で意識したいのはマグネシウム
筋肉がゆるむとき、体の中ではマグネシウムが働いています。マグネシウムは汗と一緒に失われやすいうえ、現代の食生活では不足しがちといわれるミネラルです。
多く含む食材は、納豆や豆腐などの大豆製品、わかめやひじきなどの海藻、ナッツなど。「汗をかいた日は、水だけでなく味噌汁を一杯」——これだけでも、水分・塩分・ミネラルをまとめて補えます。そうめんだけ、冷たい麺だけの食事が続くと、たんぱく質もミネラルも足りなくなりがちです。夏の食卓にこそ、豆腐や納豆、海藻の小鉢を一品足してみてください。
今夜からできる予防の工夫6つ
すべてやる必要はありません。「これならできそう」というものから始めてみてください。
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1水分補給は「水だけ」にしない
汗をかいた日は、味噌汁や麦茶などで、ミネラルも一緒に補いましょう。水だけをがぶ飲みすると、かえって体の中のミネラル濃度が薄まってしまうことがあります。
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2食卓にマグネシウムの一品を足す
納豆・豆腐・海藻・ナッツなど、マグネシウムを含む食材を小鉢で一品。冷たい麺だけの食事が続く夏こそ、意識して足したいところです。
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3冷房の風を足に直接当てない
冷房は我慢せず使ってかまいません。そのうえで、風向きを調節し、ふくらはぎに薄い掛け物やレッグウォーマーを。一晩じゅう冷やされ続けるのを防ぐだけで、足の血流はずいぶん違います。
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4寝る前にアキレス腱伸ばしを30秒ずつ
反動をつけず、じんわりゆっくりが基本です。寝る前にふくらはぎを伸ばしておくことで、夜中の誤作動が起きにくい状態を作ります。
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5シャワーで済ませず、湯船に浸かる
冷房で冷えた足の巡りを回復させるには、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがいちばんの近道です。お風呂上がりの承山押しやストレッチと組み合わせるとなお良いです。
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6日中は1時間に1回、立ち上がって歩く
ふくらはぎのポンプを日中に動かしておくことが、夜のむくみと血流の滞りを防ぎます。デスクワークの方は、席を立つきっかけを決めておくと続けやすいです。
つってしまったときは、あわてずゆっくり
それでもつってしまったときは、膝をのばして、つま先をゆっくり自分のほうへ倒します。タオルを足の裏にひっかけて手前に引くと、楽にできます。
ポイントは「ゆっくり」です。反動をつけて急に伸ばしたり、力まかせに揉んだりすると、筋肉を傷めることがあります。痛みが引いたあとは、ふくらはぎを軽くさすって温めてあげてください。
こんなときは、医療機関にご相談を
- ほぼ毎晩のようにつる日が続いている
- 足のむくみやしびれをともなう
- 歩くとふくらはぎが痛み、休むと楽になる
- 持病があり、お薬(利尿薬など)を飲んでいる
こうした場合は、こむら返りの裏に別の要因が隠れていることがあります。セルフケアだけで様子を見ず、一度医療機関にご相談ください。
※このコラムは一般的な養生(日々の暮らしの工夫)のお話です。効果の感じ方には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
足がつる悩みに、鍼灸でできること
当院では、初診に約90分かけて丁寧にお話をうかがいます。足がつる頻度やタイミングだけでなく、お食事の内容・冷房との付き合い方・日中の体の使い方・睡眠の状態まで、足がつる背景を体全体から一緒に探していきます。
施術では、はりとお灸でふくらはぎの巡りと自律神経のバランスを整えることを目指します。冷房で冷えた足には、お灸でじんわり温めるケアがよく合います。あわせて、その方に合ったセルフケアや食事の工夫もお伝えします。
「たかが足がつるだけで」と思わず、つらい夜が続いているなら、どうぞ一度ご相談ください。
まとめ
- 夏のこむら返りは「水分不足」だけでは説明できないことが多い
- 汗で失われるミネラル・冷房の冷え・日中の運動不足の3つが重なって起きやすくなる
- 水分補給は「水だけ」にせず、味噌汁や麦茶でミネラルも一緒に
- 冷房の風対策・寝る前のストレッチ・湯船・日中に歩くことが予防の軸
- つってしまったら、反動をつけずゆっくり伸ばす
- 毎晩続く・しびれをともなうなどの場合は、医療機関へ