背筋を伸ばして、胸を張って、よし。
その五分後には、また画面に顔が近づいて丸まっている。
八尾市でデスクワークをされている方から、こうしたご相談をよくいただきます。一日に何度もやり直しているのに、どうしても続かない。そして多くの方が「自分は意志が弱いから」「筋力が足りないから」とおっしゃいます。
ただ、私は少し違う見方をしています。続かないのは、姿勢の直し方のほうに理由があることが多いのです。
「胸を張る」が続きにくい理由
胸を張った姿勢をよく観察すると、背中や肩まわりの筋肉を働かせて、上体を引っぱり上げている状態になっていることがあります。
筋肉は使い続ければ疲れます。ですから、しばらくして崩れてくるのは、体の反応としてはごく自然なことです。頑張りが足りなかったわけではありません。
それだけでなく、上体を力ませると胸やお腹まわりが動きにくくなり、呼吸が浅くなりやすくなります。呼吸が浅い状態が続くと、首や肩の筋肉が呼吸を助けるように働くことがあり、「姿勢を直したのに肩が重い」という感じにつながる場合もあります。
姿勢がもたないのは、意志の弱さでも筋力不足でもなく、「力で保つ姿勢」を選んでいるからかもしれません。
姿勢は「力」より「重さの置き場所」
体には、あまり力を使わなくても上体が安定して収まる位置があります。頭の重さ、胸の重さ、その重さがどこに乗っているかで、必要な筋肉の働きは変わってきます。
重さが前に落ちていれば、背中側の筋肉がずっと引っぱり続けることになります。逆に、重さが背中側でうまく支えられていれば、力を抜いていても上体が起きたままになりやすいのです。
ですから、目指すのは「頑張って伸ばした背中」ではなく、力を抜いているのに伸びている背中ということになります。
背中に預ける、三つのステップ
痛みのない範囲で試してください。動かしていて痛みが出たら、そこで中止してください。
1. 息を吐きながら、上体を軽く後ろに倒す
椅子に座ったままで構いません。反り返る必要はありません。ほんの少し、後ろに傾けるだけです。背もたれがあれば使ってください。
2. 体の重さを、背中に「預ける」
ここが一番のポイントです。支えるのではなく、預ける。支えようとすると、また筋肉が働き始めてしまいます。重さを後ろに手放して、体をあずけてしまうイメージです。
3. 力を抜いたまま、ゆっくり起こす
預けた感じを保ったまま、上体をゆっくり起こしていきます。途中で「力を入れずに背筋が伸びている」と感じる場所があれば、そこがその方にとっての楽な位置です。
一度で見つからなくても構いません。何度か行き来しているうちに、はっきりしてくることがあります。
合っているかどうかの見分け方
正しい姿勢かどうかを、見た目だけで判断するのは難しいものです。ひとつの基準で決めず、いくつかの時間帯で確かめてみてください。
- やっている最中:息が吸いやすいか。胸を張ったときより呼吸が楽なら、方向は合っていることが多いです
- 数時間後:首の付け根や肩の上に、張った感じが出ていないか
- 翌朝:起きたときに、背中や腰が重くなっていないか
どれかひとつだけで判断せず、全体として楽なほうを選んでください。やったあとに痛みやしびれが出る場合は続けないでください。
東洋医学からみた「背中」
東洋医学では、背中の中心を通る督脈、その両側を上下に走る膀胱経という流れを重く見てきました。背中は、姿勢を支える場所であると同時に、体調のあらわれる場所として扱われてきたということです。
実際、疲れがたまっている方の背中は、押したときの硬さや冷たさに左右差が出ていることがあります。姿勢を「見た目の問題」だけでなく「体全体の状態のあらわれ」として見ていくのが、東洋医学の考え方です。
※これは東洋医学の伝統的な考え方をご紹介したもので、現代医学の診断とは別のものです。
こんな時は医療機関へ
姿勢の問題ではなく、別の原因が隠れていることがあります。次のような場合は、セルフケアより先に医療機関へご相談ください。
すぐに受診をおすすめする場合
- 転んだ、ぶつけたなど、けがのあとに背中が丸くなった・痛みが出た
- 胸の痛み、息苦しさ、冷や汗、あごや腕へ広がる痛みをともなう
- 手足のしびれ、力が入りにくい、ボタンがかけにくい、歩きにくい
- 強い痛みで眠れない、じっとしていても痛む
- 発熱や体重の減少をともなう
急がなくてよいが、一度相談したい場合
- 二週間ほどセルフケアを続けても、変化が感じられない
- 体を後ろに反らせると痛みが出る
- ここ数年で身長が縮んだ、背中の丸まりが以前より強くなった
- 骨粗しょう症を指摘されたことがある
特にご高齢の方で、背中の丸まりが短期間で進んだ場合は、背骨の状態を一度確認しておくと安心です。
当院で見ること
今西健はり・灸院では、姿勢を「正しい形に直す」という見方はしていません。その方の体が、今どこに重さを置いているのか。どこが働きすぎて、どこが休んでいるのか。そこから整理していきます。
東洋医学の視点で全身の状態をみて、必要に応じて鍼やお灸で緊張が抜けやすい状態を目指します。カイロプラクティックで骨格のバランスを調整し、運動療法で日常の体の使い方を見直します。分子栄養学の視点からは、疲れにくい体の土台についてお伝えします。
初診は約90分かけて、丁寧にお話を伺います。
姿勢を直しても続かない。そんな時は一度ご相談ください。
形を作るのではなく、力を抜いても伸びている位置を一緒に探します。
参考資料
- 日本整形外科学会「頚椎症性脊髄症」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html
- 日本整形外科学会「骨粗鬆症」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を目的とするものではありません。症状が続く場合は医療機関へご相談ください。